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『曾根崎心中』

 元禄16年(1703)4月、大坂曾根崎の森で起こった若い商家の手代と遊女の心中事件は、すぐに道頓堀の歌舞伎芝居で一夜漬け狂言として競演され、評判を取っていた。そして、翌月には、京都から大坂へ来ていた近松門左衛門が竹本筑後掾(前名竹本義太夫)のために人形浄瑠璃として書き下ろし、大当たりを取ったのである。それまでの浄瑠璃は伝承化しているような歴史上の事件や人物を素材とすることが多かったが、本作は同時代の事件を取り上げた「世話物」第一作として名高い。本書には、この浄瑠璃を語った筑後掾の7月28日の序文と作者近松の8月9日の序文が載っているのが特徴で、5月の興行の成功を記念して、山本九兵衛と山本九右衛門の相版元で出版された。しかも、唯一現存が確認されている六行本であり、従来から注目を浴びている貴重な版本である。この興行の成功により、経営が苦しかった筑後掾の竹本座は立ち直り、それまで京都で坂田藤十郎のために歌舞伎作品を手掛けていた近松は、後に活躍の場を大坂へと移し、浄瑠璃作者に専念していくことになる。

細川文庫
 浄瑠璃研究家細川景正氏(明治19年−昭和39年)の旧蔵書で、浄瑠璃正本30 点、浄瑠璃評判記7点、唄本7点、その他外題年鑑や三味線、双六関係など総計60余点からなる文庫で、昭和58年に本学に譲られた文庫であるが、ここにしか現存が確認できない貴重な資料が多い。

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