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ヘルマン・ヘッセ 『ロマン的な歌』

 ヘッセの処女詩集。タイトルの『ロマン的な歌』、そしてモットーとして掲げられたノヴァーリスの詩「異邦人」から、ヘッセの美的告白の趣が感じられる。「美に寄せて」、「死んだ女性に」、「死の国」、「去り行く青春」、「暗い目」、「不安」など46篇の詩から成り、孤独、望郷、絶望、青春、憧憬、憂鬱、夜、星、夢といった語句で彩色されたロマン派的モティーフが基調音を奏で、真昼のまぶしい陽光を避け、立ち竦む若者の失意が甘い感傷とともにうたわれている。
 1892年3月、15歳のヘッセは前年の9月に入学した神学校を突然脱走し、聖職者へと通じる階梯を自ら降りてしまう。以後4年以上にわたるヘッセの焦燥と惑乱も、1895年10月テュービンゲンの書店員となった頃から、ようやく落ち着きをみせはじめる。ゲーテとロマン派に親しみ、詩作に励むヘッセはこの小さな詩集を過ぎゆく季節のモニュメントとした。
 タイトルページには1899 とあるが、1898年10月に刊行されている。自費で出版された600部のうち、書評用に贈呈された68部をのぞくと、1900年1月までに売れたのは、仮綴43部を含む54部だった。処女詩集にまとめられた詩も、1902年の『詩集』に幾つかが採録されたほかは、1942年の『詩集』に「1895−1898年の詩」として収録されるまで、ながらく埋もれたままであった。

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