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マーク・トウェイン『まぬけのウィルソンの悲劇』

 本書は、『トム・ソーヤーの冒険』や『ハックルベリー・フィンの冒険』と同様、南北戦争以前のミシシッピ川沿いの町を舞台とする小説。『王子と乞食』 と同じく、二人の人間が立場を入れ替える趣向を取り入れた本作品には、異人種間結婚、奴隷制度、人種偏見、堕落した貴族的価値観、歪んだ親の愛など、さまざまなテーマが取り上げられているが、二つの物語が交錯して内容が未消化に終わっている。奴隷女が生まれたての我が子を同じ日に生まれたお屋敷の若殿とこっそり取り替えたことから起こるその後の悲劇と混乱。そこでは生まれついて持っている人種の「血」と環境によって形成される人間性の問題が絡み合う。奴隷の子として育てられ、無実の罪で投獄された若殿の潔白を証明するのが「まぬけ」(“pudd'nhead”)と綽名される若者ウィルソンという筋立て。珍しいのはこの作品が指紋を犯罪捜査に使った最初の例であることである。当初トウェインは本書を自ら設立した出版社であるCharles L. Webster & Co. から出版することを望んでいたが、1894年4月同社が破産したことで断念、同年11月にAmerican Publishing Company から、下敷きとしての性格を持つ、双子を扱った短編“Those Extraordinary Twins”と併せて出版した。各頁の縁に漫画的挿絵がついた本書は1894年の初版本で、遊び紙に日付とトウェインの直筆署名が残されている。

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