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『除蝗録』

 クジラには食肉以外に多様な用途があった。鯨油はヨーロッパやアメリカでは、主として石鹸と光源として利用されたが、水田耕作が経済の中心にあった日本ではまったく別の用途が開発された。そのひとつがイナゴやウンカなど稲の害虫駆除で、水田に鯨油を撒き害虫を窒息死させるという方法である。『除蝗録』(1826)は従来のいわゆる「虫送り」の儀礼から当時最新の鯨油を使った除虫法までを解説したものである。
 著者の大蔵永常(1768-?)は豊後生まれの農学者であり、九州各地や中国、近畿、北陸、東海などで観察研究を重ね、農業改良のための著作を発表している。鯨油を使う除蝗法は18世紀前半には開発されていたようだが、この技術がどれほど広まったかは不明である。使用されているクジラ図は著者が1817年に太地浦の鯨組和田家で見た絵巻の図と推定され、『鯨紀』と同系統のものといえる。なお、上野文庫には葛の採取から製造までを解説した大蔵永常の『製葛録』(1828)も収録されている。

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