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『平家物語』

 『平家物語』は平安時代末期の平家一門の滅亡と源頼朝による武士政権の確立までの歴史を描く軍記文学の雄である。そのテキストは、琵琶法師によって語られた「語り本系」と、主に知識人が読むことを目的に記された「読本系(増補系)」の2 つに大別される。「語り本」はさらに琵琶法師の属した流派によって一方系と八坂系に分けられるが、本書は一方系の語り本で覚一本系統に属し、全12 巻。灌頂巻(かんじょうのまき)(建礼門院徳子の記事をまとめたもの)は独立させず、巻12の巻末に置かれている。
 本書は近世前期の書写であり、全体的には流布本に近いが、流布本にはなく覚一本にある「願文」(巻5)が本書には存在するなど、覚一本と流布本の間にある伝本と思われる。また巻11「剣」を欠くなど特異な部分があるほか、独自の章段分けも見られる。さらに本文中の漢字には細かく読み仮名が付され、平仮名部分にも漢字が振られているなど、近世前期の平曲(平家琵琶)の詞章の読み方を推測させる点でも貴重である。

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