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ギュスターヴ・フロベール『ボヴァリー夫人』

 ギュスターヴ・フロベール(Gustave Flaubert 1821−1880)の『ボヴァリー夫人』は近代写実主義小説を代表する作品。田舎医師シャルル・ボヴァリーと結婚した妻のエンマは、農園主の娘で、修道院で教育を受けたロマンティックな夢多き女性。彼女の理想とは裏腹に卑俗な田舎社会、平凡で退屈な生活、誠実だが凡庸な夫に幻滅し、ふとしたきっかけから情事を重ね、最後は借金地獄に陥り、夫と娘を残したままヒ素を飲んで服毒自殺するという悲惨な物語。
 作者は作中に顔を出さない。作者は自分の感情や主観的判断を排し、さながら外科医のごとき非情さで作中人物を描くことに徹した典型的な客観主義小説。それでいて作中の隅々にまで作者の視線が感じられる。自由間接話法を駆使した特有の文体で、ありふれた素材から傑作を生み出す創作法は、写実主義、自然主義を始めとする近代・現代小説に、大きな影響を与えた。20世紀に入って、若い女性の願望と現実の乖離から生まれる社会的、感情的欲求不満を想像の世界で解消しようとする傾向を指す「ボヴァリスム」という心理用語まで生まれた。
 この作品は1856年10月から12月にかけて《パリ評論》誌に掲載されたが物議を醸し、風俗壊乱の廉で起訴されるが1857年2月には無罪判決を得た。同年4月にミシェル・レヴィー・フレール社より2巻本として出版された。本書はその初版本である。

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