貴重書ギャラリー

詞花和歌集しかわかしゅう1冊 室町時代中期—後期書写

 『詞花和歌集』は、平安後期の天養元年(1144)崇徳上皇の院宣を受けて、藤原顕輔(あきすけ)が編集した第6番目の勅撰和歌集。仁平年間(1151−1154)頃成立。10巻で400首ほどの歌を収める。「詞花」という書名は、ことばの花を集めたという意である。
 本書は、室町時代中期から後期にかけての書写。彦根藩井伊家伝来という明治時代に書かれた由緒書が付く。縦16.5糎、横12.7糎、料紙は鳥の子(斐紙)。表紙は、茶色地に金銀泥で草花を描き、裏表紙は萩と鹿を描く。外題は龍形模様の題簽で、左上隅に「詞華和歌集」とあり、見返しは、菊花紋金箔型押し出しで美しい。
 『詞花和歌集』は、藤原顕輔が院に総覧した「初度本」、その後院の指示で古歌を削除した「二度本(精撰本)」が存する。本書は精撰本系統に属するものである。本文を『新編国歌大観本(高松宮本)』と比較するに、初出歌6首は切り出され、巻1に順序の乱れがある。また9・223番歌は、詞書が相異する。収録総歌数は411首で、その特徴から初度本から精撰本系に至る途中の中間本と考えられる。