貴重書ギャラリー

姉小路済継あねがこうじなりつぐ筆『九代抄くだいしょう2冊 室町時代中期書写

 牡丹花肖柏(ぼたんかしょうはく)が、文亀3年(1503)、『後撰和歌集』から『続後撰和歌集』にいたる勅撰集の九代集から1500首の秀歌を抄出したもの。肖柏は、室町後期の連歌師・歌人である。この『九代抄』は和歌・連歌実作のため、本歌取りや証歌(使用した語句・歌語などの典拠を示すため引く歌)とすべき秀歌撰であろうと考えられる。
 書誌は、縦25.5糎、横17.5糎。上下2冊。料紙は、斐猪混漉紙。表紙は、金襴、見返しは金泥雲形模様。表紙中央に題簽、金地小短冊「九代抄 上」「九代抄 下」とある。箱の上蓋の裏に書きつけが有り、室町時代の歌人である姉小路済継(1470-1518)が書写したものを、紀伊大納言から拝領したとある。
 諸本は3類に分けられ、本書は第2 類に分類される。欠脱歌が冬部に1 首あるものの、後に追加されたと考えられる集付・部立名歌題注記は一切なく、原本の俤(おもかげ)をとどめていると言えよう。書写年代は室町中期頃と推定される。