貴重書ギャラリー

後土御門院勾当内侍ごつちみかどいんこうとうのないし筆『こはたの時雨』 1冊 室町時代末期—桃山時代書写

 『源氏物語』の影響を受け創作された鎌倉時代の擬古物語。作者不詳。物語の内容は、生みの母に忌み嫌われ山里でひっそりと暮らす姫君が、時雨が縁で若い中納言と結ばれるという話。
 書誌は、縦15糎、横16.3糎の枡形(ますがた)本で、1冊。表紙は唐草文様の緞子(どんす)、見返しは金銀箔散らし。極札を含む七種の付属文書を有する。極札には、戦国時代の能筆家後土御門院勾当内侍筆と極めるが、断定はできない。特徴ある書風から室町末期から安土桃山時代頃の書写か。現在伝えられている『こはたの時雨』の写本は、京大本・高松宮本と本大学本の3冊のみ。その中で本書は、京大本・高松宮本の親本に相当する貴重なものである。